近年、少子高齢化や人材不足の影響で、外国人雇用を検討する企業が増えています。しかし、外国人を採用する際に必ず押さえておきたいのが、「在留資格」と「ビザ」の違いです。この二つの用語は混同されがちですが、意味や役割が異なるため、正しく理解しておくことが外国人雇用の成功には不可欠です。本記事では、在留資格とビザの違いを詳しく解説し、企業が知っておくべきポイントをまとめました。
在留資格とビザの基本的な違い
ビザ(査証)とは
ビザは、外国人が日本に入国するための許可証です。正式には「査証」と呼ばれ、日本の在外公館(大使館や領事館)が発給します。ビザは入国時の審査に使用され、入国後は基本的に効力を失います。
ビザの特徴
- 入国前に取得が必要
- 日本の在外公館で発給される
- 入国時に提示する
- 入国後は基本的に役割を終える
在留資格とは
一方、在留資格は外国人が日本に滞在して活動するための許可です。入国管理局で決定され、日本で従事できる業務や滞在期間を定めます。外国人が働く場合、在留資格が就労可否を左右する重要な要素となります。
在留資格の特徴
- 入国時に決定される
- 日本での活動内容を規定
- 滞在期間を定める
- 就労の可否に直接関わる
外国人雇用に関わる主要な在留資格
外国人を雇用する際には、まずどの在留資格が就業可能かを確認することが重要です。
就労系在留資格
- 技術・人文知識・国際業務
IT関連、通訳・翻訳、貿易、企画・マーケティングなど。大学卒以上または相応の実務経験が必要。 - 技能
特殊技能を要する業務(料理人、スポーツ指導者、航空操縦士など)。通常10年以上の実務経験が求められる。 - 特定技能
2019年に新設。介護、建設、農業など16分野で即戦力人材を受け入れ可能。 - 高度専門職
ポイント制で優遇措置あり。永住申請の短縮や家族帯同が容易。
身分・地位系在留資格
- 永住者
日本に永続的に滞在可能。就労制限なし。 - 日本人の配偶者等
日本人配偶者や子どもとしての滞在。就労制限なし。 - 定住者
特別な理由で居住を認められた外国人。就労制限なし。
外国人雇用で注意すべきポイント
外国人雇用では、在留資格の確認や適正な手続きが欠かせません。以下のポイントは必ず押さえておきましょう。
- 在留資格の確認
従事予定の業務が資格に適合しているか確認する。 - 資格外活動許可
必要な場合は事前に申請。 - 留学生のアルバイト
原則週28時間以内で許可が必要。 - 在留期間の管理と更新サポート
期限切れを防ぎ、継続就労をサポート。 - 雇用状況届出の提出
特別永住者・外交・公用は対象外。 - 労働条件の適正化
日本人と同等の待遇を提供。 - 専門家との連携
必要に応じて行政書士や社労士と協力。
外国人雇用のメリットと課題
メリット
- 多様性の向上
→新しい視点やアイデアの導入が可能。 - 人材不足の解消
→介護、建設、農業などでの人手不足対策に。 - 国際展開の促進
→母国語能力や文化知識を活用し、海外展開が円滑に。
課題と対応策
- 言語の壁
→日本語研修や多言語対応でサポート。 - 文化的差異
→研修や交流で相互理解を深める。 - 手続きの複雑さ
→行政書士・社労士と連携し、専門知識を活用。
成功する外国人雇用のポイント
外国人雇用を成功させるためには、採用前から入社後まで、計画的な準備と継続的なサポートが不可欠です。まず採用前には、候補者が持つ在留資格を確認し、その資格で従事予定の業務が可能かを必ずチェックしましょう。
また、必要な手続きや申請書類の準備を前もって整え、スムーズに入社できる体制を作ることが重要です。併せて、外国人従業員が働きやすい環境を整備することも求められます。具体的には、日本語研修の提供や社内マニュアルの多言語化、業務上のサポート体制の構築などが効果的です。
入社後は、在留期間の管理や資格外活動の有無の確認を定期的に行い、更新手続きのタイミングを逃さないようにサポートします。
さらに、必要に応じて行政書士や社会保険労務士と連携し、手続き面での不備を防ぐことも重要です。これにより、外国人材が長期的に安心して働ける環境を提供できます。
法的義務を押さえてトラブル防止
法的義務を適切に履行することは必要不可欠です。
すべての外国人労働者に対してハローワークへの雇用状況届出を行い、在留カードを確認して就労可能な資格かどうかを必ず確認してください。さらに、労働条件は日本人従業員と同等に設定し、給与・休暇・勤務時間などの取り扱いで差別が生じないよう注意する必要があります。こうした対応を徹底することで、法的リスクを避けつつ、外国人材の定着率向上と企業の競争力強化につなげることができます。
まとめ
在留資格とビザの違いを正しく理解することは、外国人雇用の第一歩です。
ビザは「入国のための許可証」、在留資格は「滞在中の活動内容を定める許可証」と覚えるとわかりやすいでしょう。企業は対象外国人の在留資格を確認し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。
入社後も継続的なサポート体制を整えることで、外国人材の定着率を高め、企業の競争力向上につなげることができます。
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